無角和牛

地域の宝を届ける
平成8年に無角和種産直拡大協議会が設立されると、販売部会を立ち上げて、その要を担ったのが当時安堂畜産株式会社の社長であった安堂光明氏(現・会長)。流通業者として「売れる仕組みを作る」ことで、無角和種振興に携わってきたその想いを伺います。
流通販売を築いてこそ
大学で獣医学を学び、獣医となった安堂氏。「研究の専門は、牛の胃でした。解剖学の研究室で、胃や内臓の成り立ちなどを研究していました」。卒業後の昭和50年(1975年)には地元に戻り、幼少期から祖父や父たちが奔走するのを間近で見てきた牛肉の加工・販売の仕事を継ぐことに。すぐに、当時阿武町で行われていた競りにも出かけるようになり、減少し続ける無角和種の姿に特別な想いを抱いたと言います。

「あの頃、無角和種を扱い始めたのは僕と秋吉台ファームの松林さん(松林行雄現・会長)。それぞれ東京の別の大学で学んで獣医になって帰ってきていた。稼業に就いていて、お互い山口県出身の獣医として、これはやらなきゃいけないよなと、種の保存に対しての気持ちを持ったんだと思います。その時の気持ちはビジネスというより獣医としての使命感の方だったんでしょうね。それでも、人に扱ってもらって、食べてもらって、無角和種で商売ができてこそ、種を守ることができるわけですから。それで、生協の人や湯田温泉街の人など、志を同じくするような業者を全部集めて部会を立ち上げたんです」

無角和種産直拡大協議会のなかで流通販売部会を立ち上げて以来、安堂氏は無角和種振興の立役者となり尽力してきました。
産直方式で求める人に届ける
協議会設立の目的は、無角和種が適正な価格で流通する仕組みを作ること。そのためには、サシの入った肉と同じ土俵で比較される市場ではなく、消費者に産地から直接商品を届ける産直方式により、値付けの主導権を握ることが必要だったのです。肉料理を専門とするシェフや、そんなニーズを持つ卸売業者から問い合わせを受けると、リクエストに応えて販売網を育てました。

霜降り肉に評価が偏る時代のなかでの販売戦略として、一般消費者向けにネット販売のチャネルも設置。食通や料理評論家たちによってテレビやラジオで「おいしい赤身の和牛」として無角和種が紹介されると、コアなファンが増えるようになりました。現在もネット販売の商品はすぐに売り切れると言います。もともと出荷頭数が限られているため、ファンが入荷待ちをして、屠畜の1ヶ月前から予約が埋まる状態です。
ここにしかいない牛の価値
希少な肉が人々の口に届くシーンのなかで、安堂氏が特に価値を感じる場があると言います。それが、温泉街での提供です。

「旅行客のみなさんが食べたいのは、やっぱり地産のもの。そこで山口県にしかいない牛肉と言えば、喜んでくれる。日本で月に3頭しか食べられないということが一転、特別な体験として輝くわけです。無角を食べられるお店となるとなかなか全国探してもないわけですから、真似ができない。現状だけをビジネス視点で見れば、無角和種は数が少ないのでマーケットを急拡大することはできません。しかし、ここにしかいない牛だからこそ、紛れもない地域の宝であり、長期的な目で見ると、価値が高まる日が必ず来るはずです」
安堂畜産株式会社 会長
無角和種産直拡大協議会 流通販売部会 会長
安堂光明氏
山口県内の肉牛生産者で屠畜頭数が最も多い安堂畜産株式会社の会長を務める。無角和種の味はもちろん、希少な種の保存と継承に力を入れ、平成8年の無角和種産直拡大協議会の立ち上げから関わり、流通販売を支え続けてきた。
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