「健康な赤身の肉を味わうのに最適な調理法」という渡邊シェフの言葉通り、肉そのもののおいしさをダイレクトに味わえるビステッカ。本場イタリアのトスカーナ地方の「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」でも使用される部位を使用し、「肉汁が踊る焼き上がり」を重視する渡邊シェフ独自の方法論から、無角和種ならではの味わいを引き出す技を追いかけます。
[使う肉]
今回は、阿武町にて飼育された25ヶ月齢(雌、未経産)、安堂畜産にて骨付き加工した無角和種を使用。筋繊維の細かさや密度の高さに注目し、「同じロースでも場所により違いがあるので、舌触りの良いミディアムレア辺りを狙い、その都度、旨味の頂点と食べ心地の良さを狙い仕上げたい」と渡邊シェフ。肉の水分を保つため先に塩は振らず、冷たい状態のまま調理を開始します。
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① 肉を切り出す
湿度を調整したチルド冷蔵庫に保管し、注文ごとにカットする。厚さ約4cmほどで包丁を入れる。
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② 骨を切る
包丁にあたる骨の部分はノコギリで断つ。肉にダメージを与えないように、作業は素早く丁寧に行う。
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③ 脂を切り落とす
皮下脂肪が大きくつく無角和種では、まず脂を切り落とす作業に。保形性を維持するため、スジと脂を薄く残す。切るタイミングや切り方によって仕上がりが大きく変わる。
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④ 肉を叩く
全体が均等な厚さと触感になるように、肉叩きで軽く叩く。
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⑤ 切れ目を入れる
余分な皮下脂肪が落ちやすいように脂肪に切れ目を入れる。
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⑥ オイルを塗る
温まったロストルに牛脂を塗り、エクストラヴァージンオリーブオイルを塗った肉をのせる。肉は冷たいままで、脱水や乾きを防ぐためにまだ塩はふらない。
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⑦ 焼く
薄い茶色の焼き目がつくまで焼く。表面を焼き固めるのではなく、薄い焼き色を重ねるように。
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⑧ 焼き色を重ねる
焼き目の位置をずらしながら近火の強火で焼き、焼きあがりまでに何十回と面を返し続ける。最後に両面に塩をふる。
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⑨ 切り出す
肉は休ませず、すぐにカットして提供。表面はふっくらとして張りがある。切るとじわりと肉汁がにじむが、肉汁が流れ出してしまうことはない。噛み締めた時、口の中で初めて肉汁が溢れ出る。