『品種と土地の個性を価値に』
これは、昨年度定めた阿武町における無角和種のコンセプトです。
ここで掲げている「土地の個性」とは、簡単に言えば阿武町の個性。
持続可能な畜産を目指し、阿武町ならではの資源を活用した育て方で、無角和種を育てていくことを一つの目標に掲げています。
その価値と可能性については、こちらの東京宝山の荻澤さんのインタビューをご覧いただけたらと思います。
荻澤さんインタビュー
現在、粗飼料(草系の飼料)については、ほぼ町内自給のものを与えています。
課題なのは濃厚飼料(穀物系の飼料)で、輸入穀物を使用した飼料を購入して与えています。
ここ最近、世界的に穀物の価格が高騰し、与えている濃厚飼料の価格も高騰しています。
このままでは、無角を飼い続けることができなくなってしまう。
そこで、濃厚飼料に代わる飼料として活用できる資源にはどんなものがあるか、主に町内でリサーチを進めています。
地域に眠る、資源を知る
そんな中、無角和種のいる福賀地区の方からこんな連絡がありました。
「私たちの住む福賀地区で作られた梨を、ジャムやコンポートにして加工しているんですが、その時に出る皮や芯を、無角に食べさせてあげてはどうだろうか」
無角が食べてくれるかどうかはまだわかりませんが、まずはどんなものが出てくるのかを確認へ。
今回作業していたのは20世紀梨。
季節によっては幸水、豊水、南水という品種へ移り変わっていくそうです。
このように、福賀地区のお母さんたちが手で作業をして、福賀地区で生産された梨を処理していきます。
そうして出てきたのはこのような皮や芯。
普段は廃棄しているそうです。
話をお伺いする中で印象に残ったのは、作業されているお母さんたちが
「普段は捨ててしまうこれを、無角が食べて美味しいお肉になってくれたら、こんなにありがたいことはないね」
と言っていたこと。
人間が食べられないものを食べて、人間が食べるものになってくれるという牛の特徴に対して、自然に感謝していました。
それは、家で無角を育てていた頃の姿をよく知っているから。
人間が食べたご飯の残りなどを、稲藁などの粗飼料と一緒に与えていたころの、牛と人の関わり方。
肉質を考えると、昔のように何でもかんでもあげられるわけではないですが、地域に眠っている資源を活用して無角を育てていくことで、阿武町の個性を価値にしていきたいと思っています。